なぜ『バンビ』は怖いのか?原作とディズニー映画の違いから見える、本当の物語

自己紹介

今回紹介する作品は

ディズニー長編アニメーション第5作『バンビ』です。

本作は、鹿の王子バンビが森に生まれ、友達や森の仲間たちと出会いながら

さまざまな出来事を経験し、やがて真の「森の王子」へと成長していく物語として描かれています。

一見すると、自然に囲まれた穏やかな成長物語のように思える『バンビ』ですが、

みなさんはこの作品を観ていて、「怖い」「どこか不気味だ」と感じたことはありませんか?

今回は、その違和感の正体を探るために、

原作とアニメの違いを整理しながら

なぜ『バンビ』が「怖い」と感じられるのかを考えていきたいと思います。

それでは早速まいりましょう!

『バンビ』原作とアニメの違いとは

そもそも「バンビ」に原作があったのかと驚いた方もおられると思いますが、

実はあるです!

原作は、1923年にフェーリクス・ザルテンによって出版された動物文学小説です。

アニメ版はユーモアと温かみのある作品として描かれていますが、

原作はそれとは対照的に、より現実的で、自然の厳しさや人間の脅威にフォーカスした内容となっています。

そのため、アニメと比べて描かれている出来事や人物関係には、多くの違いが見られるのが特徴です。

それでは、『バンビ』の原作とアニメでは、具体的にどのような違いがあるのか。

ここから、いくつかのポイントに分けて見ていきましょう。


バンビの仲の良い友達が違う

アニメでは、ウサギのとんすけやスカンクのフラワーと行動を共にする場面が多く描かれています。

しかし、このとんすけとフラワーはディズニーオリジナルのキャラクターです。

そのため、バンビの子供時代の友情や日常描写の多くは、アニメ独自のものとなっています。

一方、原作では、バンビは主に鹿の仲間たちと共に行動しており、他の動物たちとの交流は、ごく限定的です。

原作には、ファリーネ(アニメではファリーン)と、その弟であるゴーボが登場し、バンビは常にこの二頭と行動を共にしています。


母親の死後

母親が殺された後の描写にも、大きな違いがあります。

アニメでは、バンビは「森の王」である父親に導かれながら成長していきます

(この父子関係は『バンビ2』で詳しく描かれています)

一方、原作では、特定の誰かがバンビを育てるわけではありません。

群れの世話焼きのおばさんや、周囲の鹿たちによって支えられながら生きていきます。

母親を失った後、群れの中でどのような孤独や苦労を経験したのかも、原作では丁寧に語られています。


父親の存在

原作におけるバンビの父親の存在は、非常に曖昧です。

「父」として明確に描かれることはほとんどありません。

その代わりに登場するのが、「森の古老」と呼ばれる鹿です。

この古老は、バンビが困難に直面したときに現れ、短い助言を残して去っていく存在で、
まるで賢者のような役割を担っています。

アニメに登場する「森の王」は、この古老の要素を取り入れて再構成された存在だと考えられます。


人間の存在

人間の描かれ方も、大きく異なります。

アニメでは、人間による襲撃は主に3回描かれていますが、原作では、人間は頻繁に森へ侵入し、動物たちを狩猟します。

そのため原作では、バンビと親しかった鹿の仲間や、他の動物たちも、容赦なく命を落とします。

原作における人間は、「時折現れる脅威」ではなく、常に死をもたらす存在として描かれているのが特徴です。


大人になったバンビ

アニメでは、大人になったバンビに春が訪れ、ファリーンと恋に落ち、彼女をめぐって別のオス鹿と決闘をします。

ここまでは、原作も同じ展開です。

しかし、その後の物語は大きく異なります。

アニメでは、決闘の後、人間たちが再び森へ侵入し、ファリーンと共に逃げる最中、バンビは撃たれて負傷します。

さらに、人間が起こした火が森へと燃え広がり、大規模な山火事が発生します。

この山火事の場面は、ディズニーオリジナルです。

一方、原作では、ファリーネと結ばれた後、
弟ゴーボが人間に殺されたことをきっかけに、バンビは「生きるとは何か」という深い苦悩に苛まれます。

その後、人間に撃たれて負傷したバンビは古老に救われ、古老が森を去る日まで共に暮らしながら、生きる意味や自然の尊さを学んでいきます。


物語の結末

アニメでは、山火事を乗り越えたバンビとファリーンは結ばれ、バンビは父の後を継いで「真の森の王」となり、双子の子を授かります。

しかし原作では、バンビは子を持たず、独りで生きていく道を選びます。

そして最終的に、古老のような「森の賢者」として、その役割を引き継ぐ存在になります。

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原作とアニメの違いを見て、いかがでしたでか。

想像以上に違いが多く、特に原作には、強い恐怖や重苦しさを感じた方もいるかもしれません。

次の章では、こうした違いを踏まえたうえで、なぜ『バンビ』が「怖い」と感じられるのかについて、考察していきたいと思います。

なぜ『バンビ』は「怖い」のか

アニメ映画『バンビ』は、なぜ「怖い」と感じられるのでしょうか。

結論から言うと

原作『バンビ』が描く人間の恐ろしさと、
ウォルト・ディズニーの巧みな映像表現が組み合わさった結果
だと考えられます。


原作『バンビ』が描く人間の恐ろしさ

原作『バンビ』の物語には、アニメ版のようなユーモアのある描写は少ししかありません。

アニメでは描かれていませんが、

原作ではバンビは子供時代から、母親だけでなく、群れの仲間や森の動物たちが人間によって殺されていく光景を目撃しています。

バンビたちは、常に人間という存在と、自然の厳しさに脅かされながら、森の中で生きているのです。

やがてバンビが大人になると、子供時代以上に人間の襲来は増えていきます。

友達を含む多くの森の動物たちが、撃たれてから力尽きるまでの過程や、罠にかかり苦しんでいる様子を、バンビは何度も目の当たりにします。

原作『バンビ』は、人間の視点ではなく、森に生きる動物の側から「狩られる恐怖」を描いた物語です。

そうした圧倒的な人間の恐ろしさこそが、
原作が語ろうとしている核心なのだと考えられます。

ウォルト・ディズニーの映像表現

ウォルト・ディズニーは、基本的に原作を強くリスペクトする姿勢を持っており、

原作の雰囲気や物語の核を保ったまま、そこに自身のオリジナル要素を加えるという特徴があります。

そのオリジナル要素の代表例が、ユーモアとホラーの振り幅です。

楽しい場面では徹底的に明るく、観る者の心を和ませる一方で、

不気味な場面では、とことん気味の悪い映像表現へと振り切ります。

こうした特徴は、ウォルト・ディズニーの初期長編作品において、特に顕著に見られます。

たとえば『白雪姫』では、白雪姫と七人の小人たちの場面は、音楽と動きに満ちた楽しい時間として描かれています。

一方で、魔女が登場する場面では、色彩、構図、演出すべてが不安を煽るものへと切り替わり、強い不気味さが前面に押し出されます。

このように、物語の場面ごとに明確な緩急をつける構成力も、ウォルトの大きな特徴のひとつです。

また、ウォルトは音楽表現にも強いこだわりを持っており、映像と音楽を一体化させることで、感情をより深く観客に訴えかけています。

ホラー表現という点で言えば、『ファンタジア』の「禿山の一夜」は、ウォルト作品の中でも屈指の恐ろしさを持つ場面だと言えるでしょう。

このように

・原作が持つ本来の雰囲気
・ウォルトならではのユーモアとホラー
・音楽表現

が加わることで、作品は単なる翻案ではなく、より奥行きのある映像体験へと昇華されています。


「怖さ」が際立った理由

では、なぜアニメ『バンビ』は、数あるディズニー作品の中でも「怖い」と感じられる場面が強く印象に残るのでしょうか。

物語の前半では、とんすけやフラワーとのやり取りを中心に、ユーモアがあり、どこか微笑ましい日常が描かれます。

この子供時代の描写はディズニーオリジナルであり、ウォルト・ディズニーらしい温かく親しみやすい表現と言えるでしょう。

しかし、バンビの母親が人間によって撃たれる場面を境に、物語の空気は一変します。

それまでの穏やかな世界が一瞬で崩れ去り、
この物語が「人間という存在の脅威」を描いた作品であることを、観る側ははっきりと意識させられます。

成長したバンビがファリーンを巡ってオス同士で決闘する場面も、暗い色調や緊張感のある音楽によって、自然界の厳しさがより強調されています。

そしてその直後、人間の襲撃が始まり、猟犬に追われるファリーン、銃弾に倒れるバンビ、さらには森全体を飲み込む山火事へと展開していきます。

ここでは、原作が描いてきた「人間の恐ろしさ」が、ウォルト・ディズニーの映像表現によって一気に表面化します。

観客はいつの間にか人間の視点ではなく、
森に生きる動物たちの立場で物語を見つめるようになり、その結果として強い恐怖を感じるのです。

『バンビ』の怖さは、単なるショッキングな出来事ではなく、視聴者の視点そのものが静かに変えられていくところにあります。

だからこそ、この作品の恐怖は、観終わった後も心のどこかに残り続けるのではないでしょうか。

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まとめ

原作とアニメ、両方を見比べてみると、『バンビ』が怖いと感じられる理由が少し見えてきます。

原作は、森に生きる動物の視点から、人間に狩られる恐怖や自然の厳しさを、かなり現実的に描いていました。

一方、アニメ版は、ユーモアや音楽、かわいらしいキャラクター表現を取り入れながらも、物語の要所で原作の持つ厳しさをしっかりと映像に落とし込んでいます。

とんすけやフラワーとの楽しい日常が描かれたあとに訪れる、バンビの母の死。

そして成長後に描かれる、人間の襲撃や山火事の場面。

この明るさと暗さのギャップがあるからこそ、恐怖はより強く心に残るのです。

気づけば私たちは、人間の視点ではなく、森に生きる動物の立場で物語を見ています。

逃げることしかできない存在として、人間を「脅威」として感じてしまう。

それこそが、『バンビ』がただの可愛いアニメでは終わらない理由なのでしょう。

『バンビ』は、子ども向けの作品でありながら、自然の中で生きることの厳しさや、人間の存在の大きさを静かに伝えてくれる物語です。

だからこそ、改めて観ると、「怖い」という感情と同時に、どこか考えさせられるものが残るのかもしれません。


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