今も昔も色褪せない名作『シンデレラ』
この物語は、時代を超えて多くの人々に愛され、語り継がれてきました
『シンデレラ』は、グリム童話とペロー童話の両方に収録されており
それぞれのバージョンで細かな違いが見られます
また、1950年にディズニーが制作したアニメーション映画『シンデレラ』では
原作とは異なる点も多く描かれています
今回は、『シンデレラ』のグリム童話版とペロー童話版の違い
そして原作とディズニーアニメーション版の違いを紹介したいと思います
それでは、さっそく見ていきましょう!
グリム童話「灰かぶり」とペロー童話「サンドリヨン」の違い
まず始めに「シンデレラ」という名前の由来を見ていきましょう
シンデレラは、英語表記だとCinderella
これを分けると
Cinder=灰かぶり
ella=エラ
これを合わせると「灰かぶりのエラ」=シンデレラ
という意味になります
またシンデレラをフランス語表記にすると
Cendrillon=サンドリヨンとなります
しかしこの「シンデレラ」や「サンドリヨン」というのは
本名ではありません
原作では、シンデレラの本名は明かされていません
物語の中で彼女は
暖炉の前で眠っていた際に灰をかぶっていたことから
グリム童話版では「灰かぶり」
ペロー童話版では「サンドリヨン」と呼ばれるようになります
それではここから
グリム童話とペロー童話の違い を見ていきましょう!
・物語の始めは
グリム版は、母親の命日から始まる
その後、灰かぶりは毎日母親の墓を訪ね、そこにハシバミの木の枝を埋める
ペロー版は、父親と継母の結婚から始まる
・灰かぶり(サンドリヨン)の性格
グリム版は、泣き虫で素直な心の持ち主
ペロー版は、優しくて、親切な心の持ち主
・灰かぶり(サンドリヨン)をいじめる人物
グリム版では、継母のいじめの描写が多い
ペロー版は、二人の姉からのいじめの描写がほとんど
・父親の振る舞い
グリム版は、継母に加担している
ペロー版では、継母の尻に敷かれている
・灰かぶり(サンドリヨン)の協力者
グリム版は、鳥たち ペロー版は、仙女
・舞踏会へ行く時
ハシバミの木に着物をお願いし、小鳥たちが持って来てくれる
仙女がかぼちゃを金色の四輪馬車、7匹のネズミを6頭の馬と御者
6匹のトカゲを従僕に変える
・シンデレラのドレスは
グリム版は、金糸と銀糸で縫われたドレスと金の靴
ペロー版は、金糸と銀糸で縫われ、宝石が縫い込まれたドレスとガラスの靴
・舞踏会はグリム版では3日、ペロー版は2日行われた
・ガラスの靴(グリムでは金の靴)を落とした理由
グリム版では、王子が階段にタールを敷いたことで脱げる
ペロー版は、走って脱げる
・二人の姉が靴を試す時
1人目の姉は足の指を切り落とし、2人目の姉はかかとを切り落とす
普通に試すが入らない
・物語の最後
2人の姉は、灰かぶりの結婚式の時
2羽のハトに両目をくり抜かれる
サンドリヨンは二人の姉のこれまでの行いを許し
二人の姉を宮廷に住まわせ、大貴族と結婚させた
いかがでしたか?
同じシンデレラの物語でも
さまざまな点が違うことが分かると思います
特に2つの原作の結末は大きく異なっています
また2つの物語の最後もだいぶ変わっていて
グリム童話の最後では
2人の姉が足の指やかかとを切り落とし
しまいには灰かぶり(シンデレラ)の結婚式で
ハトに両目を潰されるという
非常にグロテスクな展開になっています
一方で、ペロー童話では
これまでの行いをサンドリヨンが許し
2人の姉にも住む場所や婚約者を見つけてあげるという
人間の美徳を強調した優しい物語になっています
僕が思うに
グリム童話は「因果応報の物語」
ペロー童話は「美徳がもたらす幸福の物語」
として描かれていると感じました
それでは次に
グリム童話とペロー童話、2つの原作と、
ディズニーアニメーション『シンデレラ』の違いを紹介したいと思います
原作とディズニーアニメーションの違い
ディズニーアニメーションの『シンデレラ』は
グリム童話とペロー童話の2つの要素を
うまく混ぜ合わせて描かれた作品です
しかし同時にディズニーオリジナルの要素も
多く盛り込まれているのが特徴です
そのため今回は
原作2つの要素を1つにまとめたうえで
ディズニーアニメーションとの違いをご紹介したいと思います
・娘の名前
原作では語られていない、アニメ版はシンデレラ
・シンデレラの寝る場所は
原作は暖炉の前、アニメ版は屋根裏部屋
・父親は
原作では継母に従っている、アニメ版では死んでいる
・継母の本性は
原作ははじめから意地悪、アニメ版は父親の死後、本性を現す
・2人の姉は
原作では容姿は綺麗だが中身はとても醜い
アニメ版は容姿も中身も悪い
・シンデレラの性格
原作は素直で優しく泣き虫
アニメ版は優しさと継母たちに抵抗する強さがある
・シンデレラ(灰かぶり)の協力者
原作(グリム版)では小鳥たち、アニメ版はネズミたちに小鳥たち、犬と馬
舞踏会に来ていくドレスは?
原作では持っていない
アニメ版は亡くなった母親のドレスをネズミたちが手直ししてもらう
・奇跡の場面では
原作(サンドリヨン)では名付け親の“仙女”が現れる
アニメ版ではシンデレラを見守る“妖精のおばあさん”が現れる
・シンデレラのドレス
原作は金糸と銀糸で縫われたドレス
アニメ版は純白のドレス
・シンデレラの靴
原作(グリム版)は金の靴
アニメ版はペロー版と同じくガラスの靴
・舞踏会はグリム版では3日、ペロー版は2日、アニメ版は1日
・シンデレラの正体は
原作では誰も気づかない、アニメ版は継母が感づく
・姉たちが靴を試していた時
原作ではおそらく遠くで見守っていた
アニメ版は継母に閉じ込められる
しかしネズミたちに助けられる
・シンデレラがガラスを試す時
原作(ペロー版)は普通にガラスの靴が入る
アニメ版はガラスの靴を落とすアクシデントが起きる
・物語の最後
シンデレラは王子と結婚し幸せを迎えた
一方、継母たちには何も起こらない(後日談あり)
いかがでしょうか?
ところどころ、原作と同じ要素が含まれていますが
ディズニーオリジナルの要素もあることが分かると思います
僕が、シンデレラの原作とアニメ版を見比べて
特に気になったのは、
シンデレラの性格の違いです
原作では、シンデレラは継母たちに対して
抵抗することなく、言われたとおりに行動していました
しかしアニメ版では
継母たちに終始抵抗する場面が多かったと感じます
この違いには
『シンデレラ』が制作された時代背景が
関係しているのではないかと、僕は考えています
そこで次の章では
ディズニー版シンデレラの性格について
もう少し詳しく考察していきたいと思います
シンデレラの性格について
みなさんはシンデレラの性格を
どう捉えていますか?
優しい?それとも勇気がある?
もしシンデレラの性格の中に「強さ」を感じているのであれば
それは、アニメ版『シンデレラ』が制作されたアメリカの時代背景に
関係しているのではないかと考えています
『シンデレラ』が制作されたのは1940年代後半〜1950年
アメリカの女性たちは、第二次世界大戦中
工場や病院などで働きながら
厳しい生活の中で毎日を必死に乗り越えていました
これまで「家を守るのが女性の役目」とされていた時代に
外で働くことを経験したことで
男性に頼らず、自分の力で生きていこうとする
“自立の気持ち”が少しずつ芽生えていったのです
戦争によって夫や恋人を亡くす女性も多く
戦後には結婚が難しくなったり
将来に不安を感じる人も少なくありませんでした
そうしたなかで
「結婚して家庭に入ることだけが幸せではない」と考える女性が増え
自分の人生を自分で選び取っていくという価値観が広がっていきます
このような時代背景の中で描かれたアニメ版『シンデレラ』には
逆境のなかでも希望を持ち
自分の意思で未来を切り開こうとする
強くて前向きな女性像が投影されているのではないかと思います
そのため、アニメ版『シンデレラ』は
「自立によって未来を切り開いた物語」
と感じました
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まとめ
シンデレラは時代によって
物語の流れは同じでも
シンデレラの性格や細かい部分の違いによって
作品の伝えたいメッセージが変わる、不思議で奥深い作品です
僕が思うに
それぞれの「シンデレラ」は――
・グリム童話は、「因果応報」の物語
・ペロー童話は、「美徳がもたらす幸福」の物語
・ディズニーアニメーションは、「自立によって未来を切り開く」物語
というふうに、作品ごとに印象が異なると感じました
実写版『シンデレラ』にも
アニメ版から約60年の時代の流れがあり
きっとまた異なる価値観やメッセージが込められているはずです
それについては
また別の機会にじっくり考察していきたいと思います
『シンデレラ』の違いを知って
原作やアニメに興味を持った方がいれば
ぜひ読んで、観て、その違いを楽しんでみてくださいね!
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