大人になって初めて読んだ『星の王子さま』|翻訳の違いと心に刺さった名言考察

文学作品

「ねぇ、お願い・・・・・ヒツジの絵を描いて」

奇妙な小さな人物がとても真剣にこちらを見つめているのであった。

    文春文庫 倉橋由美子さん訳

『星の王子さま』は、サン=テグジュペリによって書かれた、世界的に有名な童話です。

一度は読んだことがある方もいれば、物語を知らなくても、あの金色の髪の少年の絵だけは見たことがある方もいるのではないでしょうか。

この本は日本でも数多くの出版社から刊行され、さまざまな翻訳家によって言葉が紡がれてきました。

そのため、同じ物語でありながら、翻訳者によって受け取り方や印象が微妙に変わるのも、この作品の奥深さです。

実は、僕が『星の王子さま』を初めて読んだのは、つい最近のことです。

長いあいだ「名作」として名前だけを知っていた物語を、大人になった今、ようやく手に取りました。

だからこそ感じたのは、この作品に散りばめられた名言の重み

子ども向けの童話だと思っていたはずなのに、むしろ大人になった今のほうが、胸に刺さる言葉がある。

それはもしかすると、日々の忙しさのなかで、いつの間にか見えなくなっていたものを思い出させてくれるからかもしれません。

今回は、各出版社から出ているおすすめの『星の王子さま』をご紹介するとともに

“はじめての読書体験”として、あの有名な名言をどのように感じたのか――僕なりのちょっとした感想もあわせてお伝えしたいと思います。

翻訳でここまで変わる――あなたに合う『星の王子さま』の選び方

今回、『星の王子さま』を読むにあたって、僕にはひとつ悩みがありました。

――どの出版社の『星の王子さま』を読めばいいのだろう?

みなさんも、同じ疑問を抱いたことはありませんか。

『星の王子さま』は、さまざまな出版社から、多くの翻訳家によって刊行されています。

物語の内容は同じでも、言葉の選び方や言い回しが違えば、受け取る印象も変わる。それが、この作品の面白さでもあり、難しさでもあります。

そこで今回は、かつての僕と同じように悩む方のために、主な翻訳者ごとの特徴をご紹介したいと思います。


スタンダード版:内藤濯さん訳(岩波文庫)

まずは、岩波文庫から出版されている内藤濯さん訳です。

内藤さんは、日本で初めて『星の王子さま』を翻訳し、現在のタイトルを付けた人物でもあります。

その意味で、この訳はまさに“原点”とも言える存在です。

文章には独特のリズムとクセがあり、最初は読みにくさを感じるかもしれません。

しかし読み進めるうちに、その硬質で美しい言い回しが、物語や名言に深みを与えていることに気づきます。

初めて読む方、まず王道から入りたい方には、このスタンダード版をおすすめします!

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絵本でおすすめ:池澤夏樹さん訳

次にご紹介するのは、子ども向けに読むならおすすめしたい池澤夏樹さん訳です。

文庫版と違い、絵本は子どもが理解できる言葉で物語を届けなければなりません。『星の王子さま』の本質はとても深く、小さな子どもには難しい部分もあります。

その難しさを、やわらかく、丁寧に届けてくれるのが池澤さんの訳です。親子で読み聞かせができるよう配慮されており、言葉も自然で親しみやすい。

絵本版でも内藤訳はありますが、池澤さんの訳は特に“入口”として優れています。必要以上に物語を削ることなく、違和感なく読める点も魅力です。

小さなお子さまに『星の王子さま』を届けたい方には、ぴったりの一冊でしょう。

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小中学生におすすめ:三田誠広さん訳(講談社 青い鳥文庫)

講談社・青い鳥文庫から出版されている三田誠広さん訳は、小中学生向けとして非常に読みやすい訳です。

言葉が丁寧に噛み砕かれており、漢字にはルビも振られています。物語の流れに引っかからず、すっと読み進められる工夫が随所に見られます。

読書感想文にも取り組みやすく、物語のテーマが理解しやすいのが特徴です。

お子さまに最初の一冊を選ぶなら、安心しておすすめできる訳です。

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優しさと温もりを感じたいなら:河野万里子さん訳(新潮文庫)

もし『星の王子さま』に、癒しや優しさを求めるのであれば、新潮文庫の河野万里子さん訳がおすすめです。

全体的にやわらかい語り口で、言葉に丸みがあります。王子さまが感情的になる場面でさえ、どこか温もりが感じられるのが印象的です。

物語を通して心を落ち着かせたい方、優しい余韻に包まれたい方に向いている訳だと感じました。

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詩のような語り口:倉橋由美子さん訳(文春文庫)

個人的にもっとも印象に残ったのは、文春文庫の倉橋由美子さん訳です。

『星の王子さま』には哲学的な言葉が数多く登場します。その言葉を、まるで詩のような響きで表現するのが倉橋訳の特徴です。

言葉の選び方が洗練されており、登場人物の台詞がより立体的に響きます。

教訓や気づきを求めて読むなら、心に残る一冊になるでしょう。

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このように、『星の王子さま』は翻訳者によって印象が大きく変わる作品です。

どの訳が正しい、ということではありません。

大切なのは、自分が今、どんな言葉を求めているか。

あなたにとっての“王子さま”は、どの翻訳で出会うでしょうか。

ぜひ、自分に合った一冊を探してみてください!

大人から読んだ「星の王子さま」

たいせつなことはね、目に見えないんだよ・・・・・
      岩波文庫 内藤濯さん訳

なぜ大人になると、子どもの頃には見えていたものが、見えなくなってしまうのでしょうか。

今回、はじめて『星の王子さま』を手に取りましたが、正直に言えば、この物語の本質を僕はまだ完全には理解できていません。た。

でも、それで良いのだと思っています。

なぜならこの童話は、年齢を重ねるたびに、子ども時代に持っていた“本質を見る力”を思い出させてくれる物語だと感じたからです。

だからこそ、この作品は長い年月を超えて読み継がれているのではないでしょうか。

この章では、僕自身が特に考えさせられた名言を、僕なりの解釈とともに紹介していきます。


大人は数字が好きだ。新しくできた友人のことを話すとき、大人はほんとに大切なことは訊かない。

    文春文庫 倉橋由美子さん訳

僕たちが子どもだった頃、友達はどうやってできていましたか?

同じクラスだったから。
たまたま公園や習い事で知り合ったから。

そこに損得はなく、肩書きもなく、ただ「一緒にいて楽しい」から仲良くなっていたはずです。

けれど大人になるとどうでしょう。

その人の経済状況や立場、メリットやデメリット――いつの間にか、目に見える情報で相手を判断してしまっている。

それは、本当の意味での「友達」なのでしょうか。

この言葉は、僕たちが“人をどう見ていたか”を思い出させてくれる一文だと感じました。


ことばじゃなくて、してくれたことで、あの花を見るべきだった。(中略)でもぼくはまだ、あまりに子どもで、あの花を愛することができなかった。

    新潮文庫 河野万里子さん訳

王子と花のやり取りを、僕は完全には理解できていません。

けれどひとつだけ強く感じたことがあります。――愛を伝えるのは、とても難しい。

花は王子を愛していた。
王子も花を愛していた。

それでも二人は、うまく想いを伝えられず、すれ違ってしまいます。

好意があるのに、どう表現すればいいのかわからない。その結果、誤解が生まれてしまう。

人間同士でも、同じことがあるのではないでしょうか。

「愛」は特別なものではなく、不器用で、時にすれ違うもの。そう教えてくれているように思えた名言でした。


みんなは、特急電車に乗りこむけど、いまではもう、なにをさがしているのか、わからなくなっている。だからみんなは、そわそわしたり、どうどうめぐりなんかしてるんだよ・・・・・

      岩波文庫 内藤濯さん訳

なぜ王子が突然この言葉を口にしたのか、正確には分かりません。

でも、不思議と腑に落ちた自分がいました。

人生を「線路」に例えることがありますよね。

僕なりの解釈では、
小学校から大学まで、ひとつのレールの上を進み、そのまま就職という“特急列車”に乗り込む。

スピードは速い。
でも、どこへ向かっているのか分からなくなる瞬間がある。

「自分の人生は、このままでいいのだろうか?」

王子のこの比喩は、そんな現代の大人たちへの問いかけのようにも感じました。


『星の王子さま』は、一つの物語の中に
「友情」「愛」「人生」など、さまざまなテーマを抱えています。

子ども向けの童話でありながら、どこか哲学的。

だからこそ、大人になってから読むと、より一層新鮮に感じられるのかもしれません。

読む年齢によって、受け取り方が変わる。
それもまた、この物語の魅力です。

自分に合った「星の王子さま」探し

今回紹介した名言も、翻訳者によって言い回しが異なります。

意味は同じでも、響き方が違う。
その違いが、自分に刺さるかどうかを左右します。

子どものときに読むのか。
大人になってから読むのか。

それだけでも、物語の見え方は変わります。

僕は複数の翻訳を読んだことで、自分に合った一冊に出会うことができました!

ぜひみなさんも、“自分の今”に合う『星の王子さま』を探してみてください。

きっと、いま必要な言葉に出会えるはずです。

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