「ライオン・キング」は、
「アナと雪の女王」が公開されるまで、ディズニーを代表する作品のひとつとして知られていました。
そして現在でもその人気は衰えることなく、
映画の続編、アニメシリーズ、劇団四季、さらには実写映画化まで展開され続けています。
まさに「ライオン・キング」は、今なおディズニーを象徴するタイトルのひとつと言えるのではないでしょうか。
しかし――
私たち日本人は、この作品に対して一度はこう感じたことがあるのではないでしょうか。
「どこか『ジャングル大帝』に似ていないか?」と。
実際、「ライオン・キング」は公開当時から、
手塚治虫作品『ジャングル大帝』との類似性について長年語られ続けてきました。
・白いライオンの主人公。
・王である父の死。
・動物たちの王国。
そして、“王として成長していく物語”。
確かに表面的に見れば、両作品には共通点が存在しています。
そのため現在でも、
「ライオン・キングはジャングル大帝を参考にしたのではないか?」という議論は絶えません。
しかし一方で、
「ライオン・キング」はシェイクスピア作品『ハムレット』の影響を受けているとも言われています。
もしそうだとすれば、
「ライオン・キング」は単なる“似ている作品”ではなく、
さまざまな物語の構造を組み合わせて生まれた作品なのかもしれません。
今回は、
まず「ライオン・キング」が、シェイクスピア作品『ハムレット』とどのような共通点を持っているのかを解説しながら、
この作品に見られる“王位簒奪の物語構造”について見ていきます。
そのうえで、
長年語られ続けている『ジャングル大帝』との類似性にも触れながら、
「ライオン・キング」は本当に『ジャングル大帝』に似ているのかを物語構造の視点から解説していきたいと思います。
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「ライオン・キング」は『ハムレット』を参考にしたのか
まず「ライオン・キング」は、ディズニー・ルネサンス作品の中では珍しい“原作を持たないオリジナル作品”だと言われています。
この説明自体は間違いではありません。
しかし一方で、
物語のある重要な部分については、“とある作品”から着想を得たのではないかとも言われています。
その場面とは、
「叔父が王である父親を殺し、王位を奪う」という物語の根幹とも言える部分です。
この構造が似ていると言われている作品こそ、
シェイクスピアの『ハムレット』です。
ハムレットとは
『ハムレット』は、1601年頃にシェイクスピアによって描かれた作品であり、
「シェイクスピア四大悲劇」のひとつとして知られている非常に有名な作品です。
物語は、
主人公ハムレットの父である王が、弟である叔父によって毒殺されるところから始まります。
さらに叔父は王位を奪い、母である王妃とも結婚。
父を失い、王国を奪われたハムレットは、
やがて父の亡霊から“真実”を知らされ、叔父への復讐を決意します。
「ライオン・キング」との共通点
この『ハムレット』と「ライオン・キング」の共通点としてよく挙げられるのが、
叔父によって“王である父”が殺されるという構図です。
「ライオン・キング」では、
スカーが兄であるムファサを崖から突き落とし、王位を奪います。
そしてその後、
シンバは亡き父ムファサの幻影と再会し、
「思い出せ、お前が誰なのか」という言葉を受け、自らの運命と向き合うことになります。
この、
・王を殺した叔父
・王位の簒奪
・父の亡霊から真実や導きを受ける
という流れが、『ハムレット』と非常によく似ているのです。
そのため、
「ライオン・キング」は『ハムレット』の構造を参考にしたのではないかと言われています。
作品のテーマは大きく異なる
ただし、
「ライオン・キング」と『ハムレット』は、テーマそのものは大きく異なります。
『ハムレット』の中心にあるのは、
“復讐”と“悲劇”。
疑念、狂気、死、裏切りといった重く暗い感情が物語を支配しています。
一方で「ライオン・キング」は、
王国を追われたシンバが、自分自身と向き合い、
再び故郷へ戻っていく“再生の物語”です。
作品全体には、
「命の循環(サークル・オブ・ライフ)」や
「運命を受け入れること」、「希望」といった前向きなテーマが描かれています。
つまり「ライオン・キング」は、
『ハムレット』の物語構造の一部を取り入れながらも、
ディズニー作品として全く異なるテーマへ再構築した作品だと言えるでしょう。
『ハムレット』は、現在でも文学作品や舞台劇として“最高傑作”のひとつに数えられている作品です。
もし「ライオン・キング」が好きな方なら、
この機会に『ハムレット』を読んでみることで、物語の新たな共通点や違いに気づけるかもしれません。
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そして次の章では、長年議論され続けてきた
「ライオン・キング」は本当に『ジャングル大帝』に似ているのか――
その真相について迫っていきたいと思います。
「ライオン・キング」は本当に『ジャングル大帝』に似ているのか
「ライオン・キング」と『ジャングル大帝』は、一見すると非常によく似ている作品に感じるかもしれません。
舞台はどちらもアフリカ。
そして主人公は、一匹の若いライオン。
さらに、“王として成長していく物語”という共通点も存在しています。
そのため、
「ライオン・キング」は『ジャングル大帝』を参考にしたのではないか――
という声が長年語られ続けてきました。
しかし「ライオン・キング」と「ジャングル大帝」の物語の根本は全くの別物となっています。
しかし物語の“根本的なテーマ”を見ていくと、
実は両作品は大きく異なっています。
ジャングル大帝とは
『ジャングル大帝』は、1950年に手塚治虫によって描かれた漫画作品です。
物語は、
白いライオン・レオがジャングルの王として成長しながら、人間と動物たちの共存を目指して奮闘していくという内容になっています。
実はこの作品、
ディズニー映画『バンビ』から大きな影響を受けているとも言われています。
手塚治虫自身が『バンビ』に強い衝撃を受けていたことは有名であり、その影響は『ジャングル大帝』の随所にも見ることができます。
『バンビ』は、
“自然の美しさ”だけではなく、人間の恐ろしさや自然界の厳しさも描いた作品でした。
そして『ジャングル大帝』もまた、
・人間と自然の対立
・種族の違う動物同士の共存
・弱肉強食の世界
・文明と自然の関係
といったテーマを作品内に取り入れています。
つまり『ジャングル大帝』は、
単なる“動物の王様の物語”ではなく、手塚治虫が「人間と自然はどう共存できるのか」というテーマに向き合った作品でもあるのです。
だからこそ、
「ライオン・キング」と同じ“ライオンの王の物語”でありながら、作品全体から受ける印象は大きく異なっています。
ちなみに、
『バンビ』の原作とディズニー映画版の違いについては、過去に別記事でも解説しておりますので、
興味のある方はぜひそちらもご覧ください。
【なぜ『バンビ』は怖いのか?原作とディズニー映画の違いから見える、本当の物語】
「ライオン・キング」と『ジャングル大帝』の大きな違い
それではここから、
『ジャングル大帝』と「ライオン・キング」がどのように違うのかを見ていきたいと思います。
・作品のテーマ
先ほども触れた通り、
「ライオン・キング」のテーマは、“サークル・オブ・ライフ”
つまり「命の循環」が作品全体の大きなテーマとなっています。
生きる者はやがて命を終え、その命が次の命へ繋がっていく――
「ライオン・キング」は、その自然界の循環を“王の成長物語”として描いている作品です。
一方『ジャングル大帝』のテーマは、
「人間と動物たちとの共存」
つまり、
異なる種族同士がどう生きていくべきなのかという点に重きが置かれています。
そのため両作品は、
同じ“ライオンの王の物語”でありながら、作品を通して描こうとしているテーマは大きく異なっているのです。
・主人公の出自
「ライオン・キング」では、
シンバは“次の王”として、多くの動物たちに祝福されながら誕生します。
まさに希望に満ちた始まりです。
しかし、
レオの誕生は非常に過酷なものでした。
父であるジャングルの王・パンジャは人間に殺され、その後、レオを身籠った母エライザは人間に捕らえられてしまいます。
そしてレオは、輸送船の檻の中で生まれることとなるのです。
さらに、
母から「ジャングルを守る」という使命を託された直後、嵐によって輸送船は沈没。
レオは母までも失ってしまいます。
このように、
シンバとレオはどちらも“王の子”ではあるものの、その始まりは対照的に描かれているのです。
・物語の舞台
両作品の舞台は、どちらもアフリカ大陸です。
しかし、
「ライオン・キング」が描いているのは“サバンナ”。
一方『ジャングル大帝』の舞台は、“ジャングル”となっています。
また、「ライオン・キング」には基本的に人間が登場しません。
物語は、あくまで“動物たちだけの世界”として描かれています。
しかし『ジャングル大帝』では、
・部族の人々
・文明社会の人間
・密猟者
など、多くの人間たちが登場します。
さらにレオ自身が、人間の街へ向かうエピソードも描かれています。
ちなみに『ジャングル大帝』に登場する文明社会は、私たちの世界よりも少し未来的な世界観として描かれている点も特徴的です。
・物語
「ライオン・キング」は、
叔父スカーによって王国を奪われたシンバが、再び故郷へ戻り、“王としての自分”を取り戻していく物語です。
つまり、
“王位奪還”と“自己再生”が物語の軸となっています。
一方『ジャングル大帝』は、
子ライオン・レオが、ジャングルの平和、そして人間や動物たちとの共存を目指しながら成長していく物語です。
レオは王として戦うだけではなく、異なる価値観を持つ存在同士をどう繋げるかに悩み続けます。
つまり『ジャングル大帝』は、“共存”という理想に向き合い続ける物語なのです。
このように、「ライオン・キング」と『ジャングル大帝』は、テーマ、舞台、主人公、そして物語構造など、多くの部分で大きく異なっています。
しかし――
実際に映像作品を見比べてみると、「これは『ジャングル大帝』を参考にしたのではないか?」
と感じられる場面が存在しているのも事実です。
次の章では、両作品の“類似している部分”について紹介していきたいと思います。
「ライオン・キング」と『ジャングル大帝』の類似点
ここまで見てきた通り、
「ライオン・キング」と『ジャングル大帝』は、物語のテーマや構造そのものは大きく異なっています。
しかしその一方で、
実際に作品を見比べてみると、「これは似ている」と感じる部分が存在しているのも事実です。
特に共通点としてよく語られるのが、“キャラクター構成”と“シチュエーション”です。
・キャラクター
『ジャングル大帝』は、
レオの“子供時代”と“大人時代”の二つの時代に分かれて物語が描かれています。
その中でも、特に「ライオン・キング」との類似性が語られるのが子供時代です。
まず、主人公が“若いライオン”であること。
そして、
その王を導く立場として“老猿”が登場する点も共通しています。
さらにレオには、
・オウムの「ココ」
・鹿の「トミー」
という仲の良い仲間たちが存在しています。
特にココは、どこかザズーを思わせる立ち位置となっており、
またココとトミーの掛け合いには、ティモンとプンバを連想させるようなコミカルな雰囲気も感じられます。
さらに子供時代のレオには、
左目に傷を持つ宿敵「ブブ」が存在し、その手下として二匹のハイエナも登場します。
もちろんキャラクターそのものは別物ですが、
・王となる若いライオン
・それを導く老猿
・コミカルな仲間
・傷を持つライバル
・ハイエナの手下
という役割構成を見ると、
確かに「ライオン・キング」を連想する部分が存在しているのです。
・シチュエーション
もうひとつよく比較されるのが、
アニメ版『ジャングル大帝』に登場する“ある戦闘シーン”です。
それが、『ジャングル大帝 進めレオ!』第3話「大草原の対決」。
このエピソードでは、
ジャングルの危険地帯の地図を作るため、レオが別の土地に住むライオンたちへ協力を求めます。
そして物語のラスト、
レオは巨大な木の上で敵のオスライオンと決闘することになります。
この戦闘シーンが、「シンバ vs スカー」のラストバトルを連想させるとして、長年比較され続けているのです。、
もちろん、これだけで「参考にした」と断定することはできません。
しかし、実際に映像を見比べてみると、
“構図”や“戦いの雰囲気”に共通点を感じる人が多いのも理解できます。
このように「ライオン・キング」と『ジャングル大帝』には、
明確に異なる部分が多く存在する一方で、キャラクター構成や一部の演出には、確かに似ていると感じられる要素も存在しています。
だからこそ、この二作品の比較は現在でも語られ続けているのかもしれません。
「ライオン・キング」を知っているからこそ、『ジャングル大帝』を観ることで、
“違い”や“共通点”を探しながら楽しめると思います。
もし機会があれば、
日本を代表する漫画家・手塚治虫の代表作のひとつである『ジャングル大帝』を、
ぜひ一度観てみてはいかがでしょうか。
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まとめ
「ライオン・キング」は公開当時から、『ジャングル大帝』との類似性について長年語られ続けてきた作品です。
実際に比較してみると、
・若いライオンの主人公
・王として成長していく物語
・ユニークな仲間の存在
・ライオンやハイエナの敵キャラクター
・一部の戦闘シーンの構図
など、確かに共通して見える部分が存在しています。
そのため「ライオン・キング」を観た日本人の多くが、どこか『ジャングル大帝』を連想したのも自然なことだったのかもしれません。
しかしその一方で、
物語の根本的なテーマは大きく異なっています。
「ライオン・キング」が描いているのは、“命の循環”と“王としての再生”。
一方『ジャングル大帝』は、
“人間と動物の共存”というテーマに強く向き合った作品でした。
さらに「ライオン・キング」には、シェイクスピア作品『ハムレット』を思わせる
“王位簒奪”や“父の亡霊”といった構造も取り入れられています。
つまり「ライオン・キング」は、完全なオリジナル作品でありながらも、
さまざまな作品や物語構造の影響を受けながら生まれた作品だと考えられるでしょう。
そしてだからこそ、
現在でも世界中の人々を惹きつけ続けているのかもしれません。
もし今回の記事を読んで興味を持った方は、
ぜひ『ライオン・キング』だけではなく、
『ジャングル大帝』や『ハムレット』にも触れてみてください!
それぞれの作品を知ることで、
「ライオン・キング」という作品を、また違った視点から楽しめるはずです!

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