ディズニー版『アラジン』を読み解く|アラジン・ジーニー・ジャスミンが求めた自由とは

ディズニー

『アラビアン・ナイト』(別名:千夜一夜物語)

中東や南アジアの民話・伝承・逸話を集めた物語集です

中でも有名なのが、「シンドバッドの冒険」「アリババと40人の盗賊」

そして「アラジン」ではないでしょうか?

原作のアラジンは、貧しく怠け者の少年でしたが

魔法のランプを手に入れたことで、富や地位を手に入れていく物語です

一方ディズニー版では、アラジンだけでなく

他のキャラクターたちにもフォーカスが当てられています

アラジンは原作とは異なり、貧民から王子になったことへのギャップに葛藤します

また原作で従順だった魔人(ジーニー)は

自由を求めるキャラクターとして描かれています

さらにジャスミンは、父王が決めた相手ではなく

自分で結婚相手を見つけたいという意思を示しています

このように、ディズニー版では“自由”がひとつのテーマとなっています

今回は「アラジン」の原作とディズニー版の違いを紹介しながら

アラジンとジーニー、そしてジャスミンが求めた“自由”とは何かを

考察していきたいと思います!

それでは早速参りましょう!

原作とディズニー版の違い

「リトル・マーメイド」や「美女と野獣」は

原作にディズニーオリジナルのエピソードを追加する形が多く見られます

ですが「アラジン」の場合は、その逆

原作の方が圧倒的に長く、壮大な物語なんです

そのためディズニー版は原作の展開をかなりカットしつつ

わかりやすく楽しめるようにオリジナル要素を多く盛り込んだ形です

今回は、ディズニー版の物語の流れを軸にしながら

「アラジン」の原作との違いをわかりやすく比較していきます

舞台設定の違い

原作:シナ(中国)

ディズニー版:アグラバー(中東風の架空都市)

アラジンの家族構成

原作:父親と母親が登場(父は途中で亡くなる)

ディズニー版:相棒の猿のアブー

アラジンの性格

原作:怠け者で遊び好きの少年

ディズニー版:心優しく勇気のある少年

悪役の設定

原作:マグリビ人の魔法使い兄弟と大臣

ディズニー版:国務大臣ジャファー

アラジンの協力者たち

原作:母親、ランプの魔人、指輪の精霊

ディズニー版:アブー、ジーニー、魔法のじゅうたん

洞窟に行くきっかけ

原作:魔法使い(兄)にそそのかされる

ディズニー版:ジャファーに騙されて連れて行かれる

願いの数と魔人との関係性

原作:願いの数に制限はなし。魔人はあくまで従者

ディズニー版:願いは3つまで。ジーニーは友情で繋がる存在

魔人(ジーニー)の願い

原作:ご主人に従順で、自身の願いはない

ディズニー版:自由になることを夢見ている

姫との出会いと恋の始まり

原作:ランプを手に入れた後、姫を見かけて一目惚れ

ディズニー版:市場で偶然出会い、恋に落ちる

姫の結婚に対する価値観

原作:父王が決めた王子と結婚するのが常識

ディズニー版:自分で愛する人を選びたい

王子としての試練

原作:王と姫にすぐ認められ、結婚する

ディズニー版貧民と王子としての自分に葛藤する

ランプを奪われた後の展開

原作:魔法使いの兄がアラジンに復讐

ディズニー版:ジャファーが王国を乗っ取る

悪役の最期

原作:姫が睡眠薬で魔法使いを眠らせ、アラジンが殺す

ディズニー版:ジャファーがランプの魔人となり封印される

物語の結末

原作:ランプを手放さず、国王となる

ディズニー版:ジーニーを自由にし、王子として認められる

そのほか原作では

・アラジンが王子として認められるために何度も願いを使う

・婚約後も姫や国王を喜ばせるために願いを乱用

・魔法使いの「弟」が現れて、さらなる復讐を仕掛けてくる

など、物語はまだまだ続きます!

原作「アラジン」は、今のディズニー版とはまったく異なる面白さがあります

興味を持った方は、ぜひ一度、原作も読んでみてくださいね!

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ディズニー版のアラジンとジーニー、ジャスミンは

それぞれの“自由”を強く求める存在として描かれています

実はこの「自由」といったテーマは

ディズニー版『アラジン』が制作された

1990年代のアメリカの時代背景と深く関係しているのです

次の章では

アラジンとジーニー、そしてジャスミンがなぜ“自由”にこだわったのか──

その理由を、当時の社会的な価値観や時代背景から読み解いていきたいと思います

アラジン、ジーニー、ジャスミンが求めた“自由”とは?

アラジン、ジーニー、ジャスミンが求めた「自由」は、それぞれ異なる形をしています。

アラジンは、貧民と王子という階級間の葛藤

ジーニーは、奴隷ではなく“ひとりの個”としての苦悩

ジャスミンは、女性として人生を自分の手で切り拓きたいという願望

しかし、三人に共通しているのは、

自分らしく生きたい」という思い、すなわちアイデンティティの確立だといえるでしょう

アラジンに見る「階級の自由」とは?

原作・ディズニー版を問わず

アラジンは貧しい環境で育ち、盗みをしながら生きている少年です

そんな彼が、偶然出会った王女・ジャスミンに恋をし

「王子でなければ結婚できない」という現実を知ります

そこでアラジンは、魔法のランプの力を使って“王子”へと変身します

一見、夢が叶ったかのように見えますが、物語が進むにつれて、アラジンは葛藤するようになります

「自分は本当に王子なのか?それともただの貧しいアラジンなのか?」

王宮に認められ、ジャスミンにも好意を寄せられながらも

“貧しい生まれ”という出自と“王子という見せかけの肩書き”のギャップ

に苦しむアラジンの姿が描かれます

なぜ、階級に苦しむアラジンが描かれたのか?

このようなアラジンの描写は、1990年代のアメリカ社会の現実と重なります

当時のアメリカでは

「努力すれば成功できる」とされた

“アメリカンドリーム”が揺らぎ始めていました

・富裕層と貧困層の経済格差の拡大

・正規雇用よりも不安定な非正規・パートタイム雇用の増加

教育・医療など社会インフラの格差の顕在化

これにより、多くの人が以下のような現実に直面します

「努力しても抜け出せない」

「生まれや家庭環境で、人生のコースが決まってしまう」

こうした状況が、「見えない階級社会」の存在を意識させるようになります

アラジンの“自由”は「アイデンティティの模索」

アラジンの物語に描かれているのは

ただのシンデレラ・ストーリーではありません。

・王子になっても、自分らしくいられない苦しさ

・見た目や地位ではなく“本当の自分”を認めてほしいという思い

それはまさに

目に見えにくい階級社会の中で

「本当の自分」で生きようとする若者たちの姿と重なるのです

アラジンの“自由”とは

階級を越えることそのものよりも

「どんな立場にあっても、自分の価値を信じて良い」と言えること

そうした自己肯定とアイデンティティの獲得にこそ

物語の核心があるのではないでしょうか

ジーニーが求めた“自由”とは?

原作『アラジン』に登場するランプの魔人は、アラジンの前に現れるたびにこう言います

「私はあなたの奴隷、何なりとお言いつけください。」

ディズニー版でもジーニーは、「ご主人様、願い事をどうぞ」と従者として振る舞いますが

アラジンから「君なら何を望む?」と聞かれたとき、驚いた表情を見せます

これは、ジーニーがこれまで“道具”としてしか扱われてこなかった存在であることを意味しています

そんなジーニーに対して

アラジンは初めて“ひとりの個”として接した人物でした

その瞬間、ジーニーは“従者”から“友人”へと変わったのです

ここで注目したいのは

ジーニーの求めた自由は単なる「束縛からの解放」ではなく

「人格としての自由」──自分という存在を認められることだったのではないかという点です

ジーニーの“自由”=「ひとりの個」としての尊厳

ジーニーのこの願いは

アメリカにおける奴隷制と人権の歴史をふまえると、より深く理解できます

※なお、ジーニーは黒人キャラクターではありませんが、「奴隷」「従者」という立場が象徴的に黒人の歴史と重なるため、ここではその背景に触れます。

奴隷としての黒人の歴史

アメリカでは17世紀から約250年間

アフリカから連れてこられた黒人たちは「奴隷」として扱われていました

・売買され、自由も人格も与えられず、所有物として扱われる

・読み書きも禁止され、人間ではなく“労働力”と見なされていた

解放後も残る差別と分離

1865年に奴隷制度は廃止されましたが、社会的な差別は根強く残りました

・白人と黒人を分ける「ジム・クロウ法」

・学校・バス・レストランなどの差別的制度

・実質的な支配・従属関係の継続

公民権運動と“人格の自由”の主張

1950〜60年代には、黒人たちによる公民権運動が起こります

・キング牧師の「I Have a Dream」演説

・差別撤廃を求めた非暴力の抗議行動

・単なる制度的な自由でなく“人間としての尊厳”を求める闘い

1990年代:見えない不平等と葛藤

ディズニー版『アラジン』が公開された1992年当時、法的な差別は禁止されていました。

しかし現実には、構造的な格差が残っていました

・黒人の失業率や貧困率の高さ

・教育・医療・就職機会における格差

・警察による過剰な取り締まりや偏見(BLM運動の伏線)

ジーニーの願いは、人格ある存在としての解放

ジーニーがアラジンに語った「自由になって、世界を旅したい」という願い

それは、ただ“ランプの外に出たい”という意味ではありません

・命令される存在ではなく、自分の意志で行動したい

・使われる側ではなく、愛される・信頼される関係を築きたい

つまり、ジーニーの「自由」とは

人格を持つ“ひとりの存在”として世界に受け入れられることだったのです

この描写は、かつて奴隷として扱われ、長い闘いの末に

「人間としての尊厳と選択の自由」を勝ち取ろうとした

黒人たちの歴史と、見事に重なっていると考えられます

ジャスミンが求めた“女性の自由”とは?

ジャスミンは、毎回求婚してくる王子たちを断り続けていました。

その際、父王に対してこう告げます

「私は無理に結婚は嫌なの。結婚するなら、愛がなくっちゃ。」

さらに彼女は、宮殿の外に出て

世界を自分の目で見たいと申し出ますが、それも拒まれてしまいます

ジャスミンが本当に望んでいたのは

父親が決めた相手と結婚する人生ではなく、自分自身で人生の選択をしたいということ

つまり、宮殿(家)という閉ざされた空間から飛び出し

外の世界を知り、愛する相手を“自分の意志で選びたい”という自由を求めていたのです

ジャスミンが体現する、当時の女性たちの動き

ジャスミンのように

・結婚相手を自分で選びたい

・閉ざされた空間から抜け出して、社会と関わりたい

という思いは

まさに1990年代のアメリカに広がっていた「第三波フェミニズム」と重なります

この時代のフェミニズムは、それまでの「女性差別の撤廃」運動からさらに進み

「女性である前にひとりの個人として、人生を自由に選び取る権利」を強調するようになっていきました

女性像の変化“らしさ”からの解放

この頃の女性たちは、恋愛・結婚・仕事・ライフスタイルについて

「どう生きるかを決めるのは、自分自身であるべき」

という価値観を強く抱くようになります

これは、「女性はこうあるべき」「良い妻・良い母になるべき」といった

性別に基づく“役割”からの解放を目指した動きでもありました

このような時代背景の中で、ジャスミンの描かれ方は非常に象徴的です

王女でありながら王宮の外に出たがり、結婚も“自分の意思”で決めたいと語る彼女の姿は

まさに当時の女性たちの声を代弁する存在であるといえるでしょう

※なお、1990年代の女性像の変化やフェミニズムについては、以前紹介した『美女と野獣』の考察とも関連しています。興味がある方は、そちらもぜひご覧ください。

https://tomo1927.com/%e3%80%8e%e7%be%8e%e5%a5%b3%e3%81%a8%e9%87%8e%e7%8d%a3%e3%80%8f%e3%81%8c%e6%8f%8f%e3%81%84%e3%81%9f%e3%80%8c%e5%a4%89%e5%8c%96%e3%81%99%e3%82%8b%e7%94%b7%e3%81%a8%e8%87%aa%e7%ab%8b%e3%81%99%e3%82%8b/

ジャスミンの“自由”は、女性という性別への尊重

ジャスミンが抱く願望──

・婚約者は自分の意志で選びたい

・宮殿の外に出て、もっと広い世界を見たい

これらは単なる個人のわがままではなく

1990年代の女性たちの理想像や時代の価値観を、キャラクターを通して反映したものと考えられます

当時のフェミニズムでは

「自分の人生は自分で切り開きたい」

「自分を尊重してくれる相手と結婚したい」

といった、女性としての尊厳と主体性を求める声が高まっていました

ジャスミンというキャラクターは

そうした女性たちの思いや願いを体現する“代弁者”として生まれた存在だったのかもしれません

アラジン・ジーニー・ジャスミンが求めた“自由”とは何だったのか?

ここまで見てきたように、ディズニー版『アラジン』では

3人の登場人物がそれぞれ異なる形の「自由」を求めていました

・アラジン:貧民から王子になったことで生じた“出自と階級のギャップ”との葛藤

ジーニー:ランプの奴隷として生きてきた自分から“人格ある一個人”としての自由の求め

ジャスミン:王女としての役割を拒み“自分の人生を自分で選びたい”という女性としての尊厳の訴え

一見、バラバラに見えるこの3人の「自由」ですが

その根底には共通した願いがあります

それは──

誰かに決められた生き方ではなく“自分らしく生きたい”という思い

ディズニー版『アラジン』は、こうしたキャラクターたちを通して

1990年代のアメリカ社会が抱いていた疑問や葛藤、階級・人種・性別の枠組みに対する違和感を映し出していたのかもしれません

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まとめ

ディズニー版『アラジン』は

冒険・友情・愛を描いた王道のファンタジーですが

キャラクターたちの言動を丁寧に見ていくと

実はその背景には当時の社会や歴史的なテーマが色濃く反映されていることがわかります

みなさんは、『アラジン』のどんなところが好きですか?

ちなみに僕は、ジャファーと劇中の音楽がとても好きです

もし良かったら、みなさんの好きなキャラクターやお気に入りのシーンを、ぜひコメントで教えてくださいね!

この記事を読んで

「原作を読んでみたくなった」

「久しぶりにディズニー版を見直したくなった」

そんな気持ちになった方は、ぜひこの機会に手に取ってみてください。

きっと、今までとは違った『アラジン』の魅力に気づけるはずです

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