「楽しみをトモに!」を開設して、もう1年となりました!
こうして記事を書き続けてこられたのは
記事を読んでくださったみなさんのおかげです!
本当にありがとうございます!
「楽しみをトモに!」の一周年を記念して
今回はかなりディープな作品の比較をしたいと思います!
今回取り上げる作品は
ディズニー作品の中でも“禁忌”とされてきた作品
そして東京ディズニーランドでは
今後、姿を消すのではないかと不安視されているアトラクション
そうです!
「スプラッシュ・マウンテン」と、その原作である「南部の唄」
さらに「南部の唄」の原書である
「ウサギどんとキツネどん」
「アンクル・リーマス物語集」についても触れていきます
※今回取り上げる作品は、すべて絶版・廃盤となっているため
アフィリエイト記事ではなく、純粋な考察記事となっています
どうぞお気軽にお楽しみください!
それでは、早速まいりましょう!
スプラッシュ・マウンテンの原書
まず、みなさんがスプラッシュ・マウンテンで体験しているウサギどんの物語は
『アンクル・リーマス物語集』に収録されている数多くの物語の中から
ごくわずかなエピソードを抜き出したものに過ぎません
『アンクル・リーマス物語集』は
著者であるジョエル・チャンドラー・ハリス(J.C.ハリス)が
当時アメリカ南部の黒人たちの間で語り継がれていた昔話や民話をもとに
ウサギどんやキツネどんといった動物たちを主人公として再話した物語集です
物語では
リーマスおじさんが白人の子どもに向けて
ウサギどんやキツネどんたちが愉快でありながらも
どこか残酷な事件や出来事に巻き込まれていく話を語るという形式が取られています
その収録数は非常に多く
原書では200話以上にものぼるとされています
一方、日本語に翻訳されている物語は
そのうちの半分、あるいは3分の1程度に限られているのが現状です
本書は出版当初から大きな支持を集め
やがて『アンクル・リーマス物語集』は
「アメリカのイソップ寓話」とも称されるようになりました
アンクル・リーマスとは?
実は、このアンクル・リーマスという人物は
完全な架空の存在というわけではありません
著者であるJ.C.ハリスが 勤めていた新聞社に
ときどき黒人の歌や雑談をしに来る黒人の語り部がいたとされており
その人物の名前や語り口をもとにして
「アンクル・リーマス」という語り手の人物像が形作られたといわれています
リーマスおじさんの独特な語り方は
実はスプラッシュ・マウンテンの中にも取り入れられています
スプラッシュ・マウンテンに乗っていると
どこか訛りのある日本語が聞こえてくることはありませんか?
あれは、原作におけるリーマスおじさんの訛った言葉づかいを
日本語でうまく再現し
アトラクションの演出として落とし込んだものだと考えられます
スプラッシュ・マウンテンに乗った際は
ぜひ動物たちの会話に耳を傾けてみてください!
そこには、「アンクル・リーマス」の語りのイントネーションが
日本語という形で置き換えられているのが感じ取れるはずです!
ウサギどんたちの物語
この作品に登場する動物たちの中で
物語の中心となるキャラクターは
やはりウサギどんです
みなさんが知っているウサギどんは
自由奔放でトラブルメーカー
いつも厄介ごとに巻き込まれている存在という
イメージを持っているのではないでしょうか?
大体はその通りです
しかし原作におけるウサギどんは
妻子持ちとして描かれることもあり
単に巻き込まれるだけでなく
自ら厄介ごとを引き起こす存在としても描かれています
そして、その厄介な出来事を
ウサギどんなりの知恵と機転で切り抜けていく
そこにこの物語の醍醐味があります!
ウサギどんに次いで登場回数が多いのが
キツネどんです
キツネどんは、さまざまな知恵を振り絞って
ウサギどんを捕まえ、食べようと画策する存在ですが
時には協力し合うこともあり
その関係性はまるでトムとジェリーのようにも描かれています
敵対しながらも、完全な悪役にはならない点も
この物語の特徴のひとつです!
『アンクル・リーマス物語集』には
このほかにも多くの動物たちが登場し
彼らがさまざまな事件や出来事に遭遇する物語が数多く収められています
その多くは
ウサギどんやカメどんといった弱い立場の動物たちが
キツネどんやオオカミどん
時には人間どんといった自分より強い存在を、知恵によって打ち負かす
という構造を持っています
この作品が
黒人たちの間で語り継がれてきた昔話や民話をもとにしていることを考えると
こうした物語構造には意味があります
黒人の故郷であるアフリカ大陸で語られていた話や
奴隷としてアメリカへ渡る過程で語り継がれてきたであろう物語の中で
力では敵わない者が、知恵によって生き抜くというテーマは
自然と形作られていったのではないでしょうか
こうした背景を持ちながらも
物語はどこかユーモアがあり
時には教訓めいた要素も含まれています
その軽やかさと奥深さの両立こそが
『アンクル・リーマス物語集』の大きな魅力だといえるでしょう
幻の名作「南部の唄」
『南部の唄』は、1946年に公開された
実写とアニメーションを組み合わせて描かれたディズニー作品です
個人的には
『メリーポピンズ』と肩を並べるほど評価している作品でもあります
物語は、南部の農場に移住することになった白人の少年・ジョニーが
仕事のためにアトランタへ戻ってしまった父親のもとへ行こうとする中で
リーマスおじさんと出会うところから始まります
ジョニーは、リーマスおじさんから
ウサギどんの物語を聞く中で
まるでウサギどんのように知恵を身につけ
さまざまな困難を乗り越えながら成長していきます
作中で語られるウサギどんの物語は
原作から5つのエピソードを抜粋し
それらを再構成したものです
・ウサギどんとクマどん
・タールぼうずのお話+ウサギどんとイバラのしげみ
・ウサギどんが笑いに行く場所+クマどんのさいご
これら5話をもとに
映画では3つの物語としてアレンジされています
また、原作を確認する限り
ウサギどんが家を出て旅に出るという設定は
日本で出版されている『アンクル・リーマス物語集』の中では
確認することができませんでした
そのため
ウサギどんが家を出て「笑いの国」を探すという筋立ては
ディズニーによるオリジナルの解釈・再構成である可能性が高いと考えられます
なぜ「南部の唄」は幻の作品となったのか
みなさんは、この作品について
さまざまな噂を耳にしたことはありませんか?
たとえば
・ウォルト・ディズニーは差別主義者だったのではないか
・リーマスおじさん役の俳優が、アカデミー賞にノミネートされたにもかかわらず、授賞式に呼ばれなかったのではないか
しかし、これらの噂については
明確な確証はなく、事実として断定できるものではありません
では、なぜ『南部の唄』は
現在まで公式に再公開されることなく
「封印された作品」と呼ばれるようになったのでしょうか
私自身、この作品を改めて観て感じた
根本的な要因は
物語の内容そのものよりも
時代考証の問題にあるのではないかと思います
『南部の唄』の時代背景は
南北戦争後のアメリカ南部です
現実の歴史では
南北戦争において北部が勝利したことで
黒人は法的には奴隷制から解放されました
しかしその一方で
白人と黒人の間の分断は依然として強く
差別や不平等は社会の中に深く残っていました
ところが『南部の唄』の中では
白人と黒人の関係性は非常にフレンドリーに描かれています
もちろん
ファミリー向け映画である以上
露骨な差別描写が描かれないのは当然ともいえます
ただ、その結果として
当時の南部社会が抱えていた現実の緊張関係が
ほとんど描かれていないのも事実です
そのため、この作品を何の前提知識もなく観た場合
「この時代の白人と黒人は仲が良かったのではないか」
という誤った印象を与えてしまう可能性があります
ディズニー側が『南部の唄』を再公開せず
事実上封印する選択を取った背景には
こうした歴史的誤解を生みかねない点への配慮が
あったのではないかと考えられます
スプラッシュ・マウンテンと南部の唄の違い
スプラッシュ・マウンテンの今後を考察する前に
まずはスプラッシュ・マウンテンと
映画『南部の唄』との違いを整理してみましょう!
スプラッシュ・マウンテンのストーリーは
前章で触れた『南部の唄』に登場する
ウサギどんのパートのみを体験する構成となっています
しかし、実は物語の展開は映画とは大きく異なっています
アトラクションでの物語の流れ
スプラッシュ・マウンテンのストーリーは
アトラクションでは、物語は一貫して
「笑いの国を目指す旅」として描かれます
・ウサギどん、笑いの国を目指して家を出る
・ウサギどん、クマどんを罠にかけ、キツネどんたちから逃げる
・ウサギどん、笑いの国の話を持ちかける
・ウサギどん、クマどんをはめるが、キツネどんに捕まる
・ウサギどん、イバラの茂みに投げ込まれる
・ウサギどん、自分の家へ帰る
このように
始まりと終わりが一本の旅としてつながっているのが特徴です
映画「南部の唄」での物語の流れ
一方、映画では
ジョニーの現実の出来事に合わせて
ウサギどんの物語が章立てで語られます
1話目
・ウサギどん、笑いの国を目指して家を出る
・ウサギどん、クマどんを利用してキツネどんから逃げる
2話目
・ウサギどん、キツネどんが作ったタール人形に捕まる
(※このエピソードはアトラクションでは未収録)
・ウサギどん、イバラの茂みに投げ込まれて逃げる
3話目
・ウサギどん、キツネどんに捕まり料理されそうになる
・ウサギどん、笑いの国を持ちかけ、キツネどんとクマどんを誘う
・ウサギどん、蜂の巣を使って二人を撃退する
このように
アトラクションでは「笑いの国を目指す物語」が
一本の流れとして再構成されているのに対し
映画ではジョニーの心情や出来事に合わせて
ウサギどんの話が語り分けられています
同じ素材を使いながらも
体験型アトラクションと映画という媒体の違いによって
物語の組み立て方が大きく変わっているのは、とても面白いですね!
スプラッシュ・マウンテンは姿を消してしまうのか
アナハイム、フロリダのディズニーランドにあった
スプラッシュ・マウンテンはクローズし
現在は「ティアナのバイユー・アドベンチャー」へとリニューアルされました
では、なぜスプラッシュ・マウンテンは姿を消したのでしょうか
背景の一つとして考えられるのが
近年アメリカで顕在化した白人による黒人への暴力や人種差別問題です
2020年、ミネアポリスで起きた
白人警官による黒人男性殺害事件を覚えている方も多いでしょう
この事件をきっかけに、全米各地で大規模な抗議デモが起こりました
「南部の唄」とその背景
スプラッシュ・マウンテンの原作とされる
『アンクル・リーマス物語集』は
もともと黒人の間で語り継がれてきた昔話や民話をもとにしています
しかし、その物語の世界には
黒人奴隷が置かれていた立場や扱われ方が
暗に表現されている部分もあったと考えられます
映画『南部の唄』は
南北戦争後の時代設定について誤解を招く恐れがあるとして
ディズニー側が長年、公開を自粛してきました
こうした背景から、スプラッシュ・マウンテンもまた
黒人の人々にとって辛い歴史を想起させる存在になりかねない——
そのような判断が、クローズにつながったのではないかと考えられます
なぜ「プリンセスと魔法のキス」だったのか
一方で「プリンセスと魔法のキス」は
差別的な描写がなく、黒人女性が主人公の作品です
白人キャラクターも少なく、多様性を前面に押し出した物語と言えます
本場アメリカにおいて
スプラッシュ・マウンテンをこの作品へリニューアルしたのは
時代背景を踏まえると自然な選択だったのではないでしょうか
日本のスプラッシュマウンテンはなくなるのか
私の考察としては
・今すぐクローズする可能性は低い
・しかし、適した代替作品が見つかれば、将来的に変わる可能性はある
と考えています
仮にリニューアルされるとすれば
「ライオン・キング」や「ズートピア」のような動物が中心の作品が
クリッターカントリーには合うのではないでしょうか
ただし、このエリアにはカヌー探検があり
さらにウェスタンリバー鉄道のアナウンスとも深く結びついています
クリッターカントリー全体を変更するとなれば
大規模な改修が必要となり、簡単ではありません
そのため
作品・予算・世界観の整合性
このすべてが揃わなければ、変更は難しいと考えられます
ウサギどんたちの痕跡
現在、「南部の唄」の世界観をアトラクションとして体験できるのは
日本だけです
一方アメリカ本土では
J.C.ハリスの生まれ故郷ジョージア州に
「アンクル・リーマス博物館」が存在し
彼の歴史やウサギどんたちの痕跡は今も残されています
近年、ディズニーは
長編アニメーションの実写化や続編を多く制作しています
しかし『南部の唄』はいまだ封印されたままです
けれども、多様性が重視される今だからこそ
歴史的事実を正面から描きつつ
配慮ある表現ができれば
『南部の唄』は新たな評価を受ける可能性もある
私はそう考えています
この記事を読んで
原作を読んでみたい、映画を観てみたいと思った方もいらっしゃるかもしれません
書籍や映像は、フリマサイトなどで見かけることもあります
興味を持った方は、この機会に探してみてはいかがでしょうか
そして
いつ姿を消すかわからないスプラッシュ・マウンテンを
今のうちに存分に楽しみましょう!


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