原作でもアニメでも語り継がれる
不朽のロマンス作品「美女と野獣」
実は僕、この作品がディズニー長編アニメーションの中で3番目に好きなんです！
みなさんは、『美女と野獣』のどんなところが好きですか？
僕は音楽ですね。
「美女と野獣」「朝の風景」「ひとりぼっちの晩餐会」など
名曲が多い中で
特に好きなのは「人間に戻りたい」なんです
（※実はこの曲、劇場公開版には含まれておらず、後に追加された幻の名曲なんですよ）
もし、物語やキャラクターに心を動かされた経験があるなら
今回のテーマはきっと興味深く感じていただけるはずです
『美女と野獣』は
原作・アニメともに女性の視点を強く反映した物語として知られています
しかし、1990年代の「ディズニー・ルネサンス」期に制作されたこの作品では
女性の幸福やジェンダーの役割が大きくアップデートされました
ディズニーはこの時期から
多様性や自立性といったテーマを積極的に取り入れはじめていたのです
その中でも『美女と野獣』は
ベルという新たなヒロイン像を通じて
男性キャラクターたち（野獣・ガストン）の在り方までも変えていった点が
非常に興味深いポイント
今回は
・原作とアニメの違いはどこなのか
・ベルの女性像と野獣、ガストンに与えた影響
この2点に注目して
一緒に読み解いていきましょう！
「美女と野獣」の原作とアニメの違い
まず初めに
原作には、ルミエールやコグスワース
ポット夫人などの魅力的なキャラクターたちは
一切登場しないことをご存じですか？
ディズニー・ルネサンスの時代に制作された作品は
物語に多様性を取り入れたミュージカル作品として作られているため
原作とは異なる部分がとても多いのです
しかし、物語の中でも重要な場面や構成要素は
原作からしっかりと取り上げられていることも多くあります
それでは
原作とアニメの違いを見ていきましょう
・王子が野獣になった理由
原作は、意地悪な仙女に呪いをかけられた
アニメは、王子の意地悪な態度を見て、魔女が呪いをかけた
・呪いを解くには？
原作は、美しい娘が結婚を承諾するまで呪いは解かれない（期限はない）
アニメは、バラの花びらが落ちきるまでに愛し愛されなければ解かれない
・野獣の性格
知的でやさしい心の持ち主
わがままで傲慢、自己中心的
・ベルの人物像
本好きでやさしい心を持っている（原作とアニメは同じ）
・ベルの家族
原作は父親と兄が3人、姉が2人
アニメは父親1人
・父親の仕事
原作は商人、アニメは発明家
・町の人たちはベルをどう思っているか？
家族のために頑張っている誠実な娘と思っている
本ばかり読んでいる変わっている娘と思っている
・悪役
原作は、意地悪な2人の姉
アニメは、ガストンという町の人気者
・悪役の性格
意地悪で高慢、貪欲
ナルシストでずる賢い
・父親が囚われた理由
バラを取ろうとしたから
城に入り込み、野獣の姿を見たから
・ベルが囚われた理由
父親が、家族にさよならを言いに帰ってきた時に自らが身代わりとなった
ベル自らが城を訪れ、身代わりとなった
・野獣とベルが仲良くなった理由
毎晩、夕食の時だけに現れる野獣とおしゃべりをしているうちに仲良くなった
野獣がベルを狼から助け、ベルが傷を負った野獣を介抱したことで仲良くなり始めた
・ベルが父親の元に戻った理由
8日間だけ父親に会って良いと許しを得たから
自由の身となり、雪山で倒れた父を助けに行ったから
・父親と再会したその後…
8日目に帰ると野獣と約束したが、2人の姉に妨害される
ガストンが村人たちを引き連れて、野獣を退治しに来る
・野獣が力尽きた理由
ベルが帰ってこないため、悲しみのあまり飲まず食わずだったから
ガストンに刺されたから
・悪役のその後
原作は、仙女の女王に意識が保たれたまま、石にされる
アニメは、城から転落死
原作とアニメでは、かなり違うことが分かると思います
そしてもうひとつ気づきましたか？
どこかで見たような“ある原作”と似ていると思いませんか？
そう、実は『シンデレラ』の原作と似ている部分がとても多いんです
※『シンデレラ』の原作については、今回は詳しく触れません。
まだ読んでいない方は、ぜひ下の概要欄からご覧ください！
シンデレラの性格は作品ごとに違う！？【シンデレラの原作・ディズニー版の違いを徹底解説！】
「美女と野獣」でも
シンデレラとその姉たちとの構図とよく似た“対比”が描かれています
ベルは一貫して
勇気・思いやり・優しさを持ち続けたことで
呪いが解けた王子（野獣）と結ばれます
その一方で
2人の姉はわがままで高慢な態度を取り続け
家族や町の人たちからも嫌われ
最終的には
“その性格が改まるまで石になって過ごす”という呪いを受けるのです
原作『美女と野獣』では、こう語られています
「女性の幸せは、美しさではなく、
勇気や思いやり、そして優しさという
“美徳”によって手に入れられるもの」
まさに
「女性の幸せ＝内面の美しさ」というメッセージが込められているのです
では、アニメ版ではどう描かれているのでしょうか？
次の章では
ベルと野獣・ガストンの３人の男女の変化に注目して
さらに深掘りしていきたいと思います
アニメ「美女と野獣」が今も愛され続ける理由
原作とアニメでは、ベルの性格に大きな違いはありません。
しかし、ベルの立場と役割には明確な違いが見られます
原作のベルは、家族思いで献身的な娘として描かれています
特に、父親を守るために野獣の城に行くなど
受け身のヒロインという印象が強い存在でした
一方で、アニメ版のベルはまったく異なる立ち位置にいます
村人たちの価値観に疑問を抱き
「広い世界を見たい」「自分の人生は自分で選びたい」と語るなど
自立した女性像へと描き直されました
さらに、アニメの中でのベルは
“物語に変化を起こす存在”としての役割も担っています
野獣は、ベルと出会う前はわがままで自己中心的な性格でした
しかし、ベルとの交流を通して少しずつ心を開き
他者を思いやる優しさを持つ存在へと成長していきます
この野獣と対比されるのが、ガストンというキャラクターです
彼は自信過剰で自己愛が強く
他者の意思や価値観を受け入れない人物として描かれています
ベルから拒まれるたびに、その態度はエスカレートし
支配欲・執着・暴力性へと堕ちていきます
この2人の男性が見せる
“変化する者”と“変化を拒む者”の違いを浮き彫りにしているのが
ベルの存在なのです
なぜ原作とアニメで描き方が変わったのか？
アニメ「美女と野獣」が制作された1990年代は
女性の社会的立場や価値観が大きく変わってきた時代でした
ウォルト・ディズニーの時代とは異なり
女性は「家庭」ではなく「社会」へと進出し始め
「結婚こそが女性の幸せ」という価値観が見直され始めた頃です
そのため、アニメでは
ベルが「夢や意思を持って行動する」自立型のヒロインとして再構築されました
この変化は、当時の時代背景を反映した新しい女性像の提示でもあります
野獣とガストンの“男性像の違い”とは？
1990年代は“男らしさ”の定義が見直され始めた時代でもあります
ガストンのように筋肉質でリーダーシップがあり「男だから偉い」という
旧来的なマチズモ（男性優位主義）の象徴は物語の中では否定的に描かれます
彼のような「亭主関白」的な価値観は
すでに時代遅れになりつつありました
それに対し、野獣はベルとの関わりの中で変化していきます
彼ははじめ、他人を拒む孤独な存在でしたが
ベルの自立や意志を受け入れる中で、自らを見つめ直し、変化を受け入れていきます
これは変化する社会の中で
女性の社会進出や意見を受け入れる男性像の象徴ともいえるでしょう
「美女と野獣」が伝えるメッセージとは？
アニメ版「美女と野獣」は、1990年代という時代の変化を背景に
・自立した女性の姿（ベル）
・その変化を受け入れる男性像（野獣）
・そして変化を拒み破滅する男性（ガストン）
という明確な対比構造が描かれています
そこには、「人は愛によって変われる」「理解と受容によって成長できる」という
普遍的なメッセージが込められているのではないでしょうか？
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まとめ
『美女と野獣』は、時代ごとに移り変わる
「女性の幸福とは何か」
「女性の価値観とは何か」
そして「その価値観を受け入れる男性像とはどんなものか」
こうしたテーマを描いた物語でもあります
ですが、アニメ『美女と野獣』は
もはや過去の作品
その後の社会の変化に合わせて
2017年公開の実写版『美女と野獣』では
女性の価値観がさらにアップデートされています
もし機会があれば、アニメ版と実写版を比較し
時代ごとの価値観の違いについても掘り下げてみたいと思います
この記事を読んで
・原作を読んでみたくなった
・アニメや実写映画をもう一度観たくなった
という方がいれば
ぜひ『美女と野獣』をエンターテインメント作品として楽しむだけでなく
それぞれの時代における「女性像」「幸せの価値観」もあわせて感じてみてください
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