7月31日に「モアナと伝説の海」が実写化され、公開されますね。
これまでのディズニー作品では、古い作品だと「白雪姫」が約88年後に実写化され、「ムーラン」でも約22年の期間を経て実写化されました。
しかし、「モアナと伝説の海」は、なんと約10年という短いスパンで実写化されることになります。
今回は、「モアナと伝説の海」の実写化に先駆けて、アニメ版に登場するポリネシアとは一体どのような文化なのか、そして作中で描かれたマウイやテ・フィティなど、ポリネシア神話との関わりについて紹介します。
また、実写版「モアナと伝説の海」が公開された際には、私の記事では初となる、ディズニー長編アニメーション作品と実写化作品との違いについても紹介していきたいと思います。
【Amazon:モアナと伝説の海:2ムービー・コレクション [Blu-ray]】
| モアナと伝説の海:2ムービー・コレクション ブルーレイ+DVD セット【Blu-ray】 [ (ディズニー) ] 価格:5,748円(税込、送料無料) (2026/6/3時点) 楽天で購入 |
モアナと伝説の海で見るポリネシアンとは
まず初めに、ポリネシアとは一体どのような地域なのか。
ポリネシアを分かりやすく説明すると、ハワイ、ニュージーランド、イースター島を線で結んだ三角形の海域を指します。
一度地図でこの3つの島を囲んでみてください。モアナたちの祖先は、この広大な海域をカヌーで渡りながら暮らしていました。そう考えると、ポリネシアの人びとの航海術がいかに優れていたのかを感じられるのではないでしょうか。
ポリネシアンの文化
おそらくみなさんも、この見出しを見て気付いたかもしれませんが。
実は『モアナと伝説の海』の劇中歌には、ポリネシアの人びとがどのように暮らし、どのようにして島々を行き来していたのかが描かれています。
例えば、物語の冒頭で流れる「いるべき場所」では、ポリネシアの人びとの暮らしが映像とともに紹介されています。
彼らは、タロイモなどを中心とした農耕を行い、豚や鶏を飼育しながら、バナナやココヤシなどの恵みを受けて生活していました。
また、「もっと遠くへ」では、星や波、風などを頼りに航海する様子が描かれています。ポリネシアの人びとは、こうした自然の変化を読み取りながら航海術を発展させ、生きていくために遠く離れた島々へ渡っていきました。
このように『モアナと伝説の海』では、ポリネシアの文化や歴史を音楽と映像に織り込みながら表現しています。
物語を楽しみながらポリネシア文化に触れられる点は、本作の大きな魅力の一つだと感じました。
モアナとハワイ神話
それでは、『モアナと伝説の海』で取り上げられたハワイ神話をいくつかご紹介したいと思います。
映画で描かれた神話や文化には、ハワイで今も語り継がれている神話との共通点が見られます。また、ポリネシアの神話は島々によって異なる言い伝えが残されており、同じ神や英雄であっても地域によって物語の内容が異なることがあります。
例えばハワイ神話では、母なる大地の女神パパと父なる空の神ワケアの間に生まれた子どもたちが、ハワイ諸島になったという伝承があります。
また、マウイが不思議な釣り針を使って島々を海から釣り上げたという神話も広く知られています。
このようにハワイには数多くの神話が存在します。
それではここから、『モアナと伝説の海』に登場したキャラクターたちと共通点が見られる神話を見ていきましょう。
おそらく作品をご覧になった方なら、「あのシーンだ」と思わず感じるような神話もあると思います。
英雄マウイ
映画でも活躍したマウイは、現在でも多くの島々で英雄として語り継がれており、挿入歌「俺のおかげさ」では、実際に伝わる神話をもとにしたエピソードが歌われています。
しかし、彼の出自や釣り針を手に入れた経緯などには映画オリジナルの要素も加えられています。そこで今回は、ハワイに伝わるマウイの神話の一つをご紹介したいと思います。
マウイは、月の女神ヒナと人間の父アカラナの間に生まれた5人兄弟の末っ子で、半神半人の存在でした。
マウイは昔から兄弟たちと釣りに出かけるほど釣りが好きでしたが、あまり上手ではありませんでした。そのため兄弟たちからは煙たがられ、ついには「お前が来ると魚が逃げる」とまで言われてしまいます。
傷ついたマウイが母ヒナに相談すると、あの世にいる先祖のもとへ向かうように言われます。そしてそこで、後に伝説となる不思議な釣り針を授かるのです。
釣り針を手に入れたマウイは、「今度こそ大物を釣ってみせる」と兄弟たちを誘い、再び海へ出ました。
すると突然、これまでにない大きな手応えがありました。しかし、どれだけ釣り針を引いても獲物の姿は見えてきません。
そこでマウイは兄弟たちに、
「獲物が姿を現しても、決して後ろを振り返ってはいけない。釣り針の魔法が解けてしまうからだ」
と念を押しました。
やがて海の中から巨大な島が姿を現し始めます。
しかし、兄弟の一人が獲物を見ようと後ろを振り返ってしまいました。その瞬間、釣り針の魔法は解け、せっかく現れた島は砕けながら海へ沈んでいきます。
そして、その時に砕け散った島々こそが現在のハワイ諸島になったと伝えられています。
その他にもマウイには、大地と分離されていなかった空を持ち上げて高くしたり、人々が活動できる時間を増やすために太陽を懲らしめて日照時間を長くしたりと、数々の神話が語り継がれています。
映画の挿入歌「俺のおかげさ」で歌われている数々の偉業の多くは、実際に伝わるマウイ神話をもとにしたものです。
このようにマウイは、ポリネシアの人びとにとって偉大な英雄として語り継がれており、その神話は現在でも多くの人々に親しまれています。
テ・フィティとテ・カー
『モアナと伝説の海』では、テ・フィティとテ・カーは同一の存在として描かれています。しかし、実際のハワイ神話にテ・フィティという神は存在しておらず、映画オリジナルの存在だと考えられています。
ただし、テ・フィティにはハワイ神話の神々との共通点が数多く見られます。
まず一人目は、母なる大地の女神パパです。
パパは父なる空の神ワケアとともにハワイ諸島を生み出した存在として語られており、大地や生命の源として崇められています。
また、生命や淡水、植物などを司る神カネとの共通点も見られます。
カネはハワイ神話において創造神の一柱として知られ、生命を育み、人々に恵みをもたらす神として信仰されてきました。
映画のテ・フィティもまた、島々に生命を与える存在として描かれています。そのため私は、テ・フィティというキャラクターは、パパやカネといったハワイ神話の創造や生命に関わる神々の要素を取り入れながら生み出された存在なのではないかと考えています。
もちろん、これは公式に語られている設定ではなく、あくまで私自身の考察です。しかし、こうした神話を知ったうえで作品を見ると、テ・フィティという存在がより興味深く感じられるのではないでしょうか。
テ・カーは、ハワイ神話に登場する火山の女神ペレとの共通点が多く見られる存在です。
ペレは、気性が激しく、怒ると火山を噴火させる荒ぶる女神として知られています。
ハワイには現在も多くの活火山が存在しており、人々は古くから火山の恵みと脅威の両方とともに生きてきました。そのため、火山の持つ圧倒的な力は神々の存在と結び付けて語られるようになったと考えられています。
ペレは、漆黒の長い髪を持つ美しい女性として描かれることもあれば、白髪の老婆の姿で現れることもあります。
また、彼女の怒りによって火山が噴火したり、人々が試練を与えられたりする神話も数多く語り継がれています。
こうした特徴を見ると、テ・カーにはペレの影響が感じられます。
映画では、心を失ったテ・フィティが荒ぶるテ・カーへと姿を変えます。破壊と怒りを象徴するテ・カーの姿は、火山の力と結び付いたペレの神話を思い起こさせます。
ただし、テ・フィティと同様に、テ・カーも特定の神をそのまま映像化した存在ではなく、さまざまな神話や文化的要素を取り入れて生み出されたキャラクターだと考えられます。
このようにテ・フィティとテ・カーは、ハワイ神話に登場する神々をそのまま映像化した存在ではなく、生命と破壊という自然の二つの側面を一つの存在として表現したキャラクターだと考えられます。
生命を育むテ・フィティと、怒りによって破壊をもたらすテ・カー。しかし物語の終盤で明かされるように、その二つは本来別々の存在ではありませんでした。
これは、自然が恵みをもたらす一方で、ときには脅威にもなり得るという考え方を象徴しているようにも感じられます。
モアナのおばあちゃんとアウマクア
モアナのおばあちゃんが亡くなった後、エイの守護霊が現れたのを覚えていますか?
あれは実はディズニーのオリジナルではなく、ハワイ神話で語られる「アウマクア」という存在との共通点が見られます。
アウマクアとは、家族神や先祖神を意味する存在です。
ハワイでは、亡くなった家族や先祖が神となって一族を見守ると考えられており、日本でいう守護霊のような存在と考えると分かりやすいかもしれません。
その姿はさまざまで、劇中歌「モアナ」で描かれたように先祖の姿のまま現れることもあれば、サメやフクロウ、さらにはネズミやトカゲなどの動物の姿で現れるという伝承も残されています。
私が知って特に印象的だったのは、サメのアウマクアにまつわる神話です。
ある13歳の少女は、海から上がってきた男性が訪ねてくる不思議な夢を何度も見ていました。
そしてある日、その少女は妊娠し、生まれてきた子どもはなんとサメだったのです。
家族は、そのサメが神聖な存在であることを悟り、大切に海藻で包んで海へ帰しました。
それ以降、その家族はサメを狩ることも、サメを包んだ海藻を食べることもしなくなったといいます。
そして、その一族はアウマクアであるサメに見守られながら暮らしていったと伝えられています。
このようにアウマクアという先祖や家族を見守る存在は、ディズニーのオリジナル設定ではなく、古くからハワイで語り継がれてきた信仰の一つなのです。
| やさしくひも解く ハワイ神話 [ 森出じゅん ] 価格:2,200円(税込、送料無料) (2026/6/3時点) 楽天で購入 |
まとめ
いかがでしたか?
『モアナと伝説の海』は、ポリネシアの文化や風習、そして神話を丁寧に取り入れて作られた作品です。
ポリネシアは、これまでご紹介してきたように広大な海域に数多くの島々が点在しており、それぞれ異なる文化や神話が受け継がれてきました。
そんな多様な文化を一つの作品としてまとめ上げ、多くの人に分かりやすく届けたディズニーの表現力には驚かされます。
そして、アニメ版『モアナと伝説の海』で描かれたポリネシアの文化や神話が、実写版ではどのように表現されるのかも非常に気になるところです。
マウイやテ・フィティ、アウマクアといった神話的な要素はもちろん、ポリネシアの文化や自然観がどのように描かれるのかにも注目していきます。
実写版が公開された際には、本記事にアニメ版との違いや新たな発見を書き加え、より深く作品を考察していきたいと思います。
この記事はまだ旅の途中です。
実写版『モアナと伝説の海』が公開された時、この物語がどのように完成するのかを楽しみに待ちたいと思います。

コメント